自分が作る作品は夜の都市を舞台にしていますが、それは自分が夜の都市が好きだからです。いろいろと忙しかった時期に日付が変わってから自転車を漕いで帰っていると、マンションの部屋の明かりはほぼすべて消えているのに驚いたのを覚えています。いつもより暗い誰もいない夜の道路を進んでいるとき、コンビニやガソリンスタンドの明るさが一層際立っているのを見て、なぜか胸が張り裂けそうになりました。それはきっと自分以外にもこの時間に起きて働いている人がいることに勝手に勇気づけられたのだと思います。
「都市と孤独」という課題について考えてみると、都市はその元凶というよりも、私たちが現代の生活様式の中で孤独を感じている「舞台」なのだと思います。そもそも都市には人がたくさんいて、関わる人の絶対数は少なくないはずです。それでも私たちが「こんなにたくさん人が住んでいるのに本当の自分を誰も知らない」あるいは「自分は仕事以外でこの街と接点がなく、その他の側面は誰も知らない」と感じてしまうのは、都市における人との関わり方に原因があるのでしょう。
この課題の解決のためには都市計画やコミュニティ支援など様々なアプローチがとられていますが、その多くは私たちが他者との関係を築くことをアシストするもので、やはり私たち1人1人の意識や行動がこの問題解決の鍵になるのだと思います。そんなことを考えて、キャラクターが都市で誰かを探している場面をモチーフにしました。他者と関わりたいと思うことは、自分だけでなく誰かのためにもなり得ると私は思います。状況や考えは人によって様々と思いますが、このイベントをきっかけに新しいつながりが生まれることを願っています。